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「男はつらいっすねぇ」 まほ |
Date: 2004-03-13 (Sat) |
「“好きなら好き”って言ってくれてもいいじゃない!」
そう吐き捨てて彼女は走り去って行った。
「・・・」
折角のデートも台無しだ。
彼女と知り合ったのは3ヶ月前。
前の恋を振り払うように髪型を変えて、流行の服に着替えた頃だった。
“自分の仕事に誇りを持ち、将来は独立を目指してる”と
酒に酔いながら話す僕に惹かれたと言ってたっけ。
そんな彼女も、今日の子供じみた頑固さに遂に爆発してしまった。
重い足取りで帰宅するとすぐ、いつものスタイルになった。
風呂上りでもないのにトランクス一丁で部屋をうろつき、
冷えたビールを一気に飲み干す。
「プハァ〜、うまい!」
この一杯で気持ちが楽になったと同時に、何だか腹も立ってきた。
「“好きだ”なんて言葉、そう簡単に言えるかよ。選挙カーでもあるまいし。
言葉にすると安っぽくなるから嫌なんだよ。」
飲むペースが進むにつれて、グチはさらに加熱する。
「だいたい、誰のためにめかし込んだり、残業したりしてんのかわかってんのか?
好きなのは優しく髪を撫でるだけでも充分わかるだろっ」
苛立ちながら洗濯物の処理を始めようとした瞬間、くしゃみが出た。
何の気なしに、洗濯カゴの中のズボンからハンカチを取り出して顔を拭う。
「!?コレって・・・」
クシャクシャのハンカチを僕はじっと見つめ直した。
紛れも無く、彼女からプレゼントされたものだった。
“嬉しい時も、悲しい時も側にいるから”と、
らしくないくらい照れながらくれたのをハッキリと今、思い出した。
「こんなに近くにいるんだよな・・・」
頭を掻きながら、しばし鏡の前でうなだれる。
大切なものは何も飾らない時に見えるんだと感じながら、
顔を上げて、もう一人に向かって苦笑交じりに問いかけてみた。
「男はつらいっすねぇ・・・」
相手は全てを理解しているかのように見え、それがまた妙に嬉しく思えた。
「ん〜、ヨシッ!」
そう言うやいなや、無意識にガッツポーズを決め込んでいた。
受話器を手に取り、そらんじる。
「怒ってる?機嫌直せよ・・・大好きだから」
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