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Such a Lovely Place


  「うたたね」
わったん
Date: 2004-03-19 (Fri) 
僕は本をたたみ、大きく背伸びをした後、椅子に深くもたれた。
休日に午前中から片付けや買い物をすませたおかげで
午後は特に用事もなく、本棚のガラスをぞうきんで拭いていた時、
ガラスの向こう側に埃のかぶった絵本をみつけて、久しぶりに読んでいた。
僕が小学生の時に父親に買ってもらった本だ。
題は「星の王子さま」という。当時は少し難しかったのかもしれないが、
それでもわんわん泣いた記憶があった。
この本は、いつか僕と彼女の間に生まれた子供に
読んであげるつもりだ。
 読み終えた後、とてもよい気分のまま、
少し眠たくなってメガネを机の上に置いた。
まぶたが次第に落ちていく。

”あの時もこんな穏やかな天気だったよな。”
この本を読んでいた昔の記憶が眠気と共によみがえってきた。
畳と線香の匂い。時々家に上がり込む心地よい潮風。
その風に乗って聞こえてくる高校野球のラジオ放送。
そしてそれを応援するかのように鳴る風鈴の音。
感動して泣きやんだ後、今と同じように僕はうたたねをした記憶がある。

 その当時好きだった女の子に、その本を薦められたのがきっかけだったこと。
虫歯が痛くて最後の乳歯が抜けたこと。席変えで彼女が隣になったこと。
本当は起きているのに寝たふりをして、ベッドまで父親に運んでもらったこと。
そんなささいなことをきっかけに、
僕は羊ではなく思い出が夢の世界に連れていってくれた。

あの時、僕は彼女に恋をしていたのだろうか?

君が薦めてくれた本を僕は見たいと思った。
君がこけて泣いている時は保健室に真っ先に連れて行った。
席が隣の時は、嫌だった授業もこのまま終わって欲しくなかった。。。
恋の感覚がその当時わからなかったから、余計に楽しかったり苦しかったり。
それが恋だってわかったのは今でも同じ気持ちで「星の王子さま」を読めたからだった。

彼女は今、とても素敵な人と一緒に新しい生活をはじめている。
偶然立ち寄った店で何十年ぶりに出会っても、本を薦めてくれていた時と
同じ笑顔、、、いや前よりも優しく奇麗な笑顔がそこにあった。
僕の気持ちも、君の笑顔も、変わらないことが時には必要なことを教えてもらった。

初恋は実らない方がいい。でも永遠に初恋の相手は変わらない。

僕が眠りから醒めるとコンコンと歯切れのいい音が聞こえてきた。
まな板の音で起きた僕は、小さい頃と変わらず猫のような背伸びをすると、
いつの間にか膝にかかった毛布が落ちた。
、、、嬉しいな。僕はこの世で一番の女性と結婚したんだ。
下唇を噛んで必死にこらえるぐらい幸せだ。
この毛布のように、優しさというぬくもりを僕は守ろうと思う。
あの初恋のように、いつまでも彼女に胸を高鳴らせていこう。

この愛する毎日を。この愛する場所を。

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